「孤狼の血 LEVEL2」は、前作から3年後を描いた、原作とは異なるオリジナルストーリーです。
鈴木亮平さんの怪演が大きな話題を呼び、日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞しました。
一方で、今作をひどいと感じる人も一部いるそうです。
否定的な意見が出ている理由の考察、あらすじや作品の見どころを紹介していくので、参考にしてみてください。
| 作品名 | 孤狼の血 LEVEL2 |
|---|---|
| 公開年 | 2021年 |
| 上映時間 | 138分 |
| 監督 | 白石和彌 |
| 脚本 | 池上純哉 |
| 音楽 | 安川午朗 |
| キャスト | 松坂桃李 鈴木亮平 村上虹郎 西野七瀬 音尾琢真 |
| 配給 | 東映 |
【孤狼の血 LEVEL2】映画はひどい？あらすじを結末・ラストまでネタバレ解説
「孤狼の血 LEVEL2」のあらすじを起承転結に分けて紹介していきます。
なぜ、悲惨な出来事が続いてしまうのか、こちらを見て整理していただきたいです！
起：大上亡き後の呉原
呉原東警察署の大上、五十子会の五十子が亡くなり、尾谷組の一ノ瀬が逮捕されてから3年が経ちました。
日岡は、風貌がどことなく大上に似てきており、ヤクザをスパイにして手懐けています。
ヤクザ側も、仁義より金儲けのことを考える者が増え、全体的にぬるい空気が流れていました。
そんな中、徳島刑務所から広島仁正会に属していた上林が出所します。
上林は、刑務所で激しく拷問をしてきた看守の妹を出所間もなく殺害し、混乱をもたらすのでした。
承：上林の乱
殺人事件は瞬く間に捜査に上げられて、広島県警の本部から瀬島が、日岡のコンビとして派遣されました。
定年間近でのんびりした雰囲気の瀬島に、日岡は面食らいながらも共に行動して真相を究明します。
一方、上林は五十子の敵討ちを計画するも、仁義を軽んじて金儲けに走る極道達に呆れて、次々に極道幹部を殺していきました。
広島仁正会でも手を負えない存在になった上林は、広島仁正会を乗っ取って上林組を立ち上げます。
上林は、五十子殺害計画の張本人である日岡と対面し、狙いを定めるのでした。
転：チンタの悲劇
日岡は、上林組に属するチンタをスパイにしますが、上林に勘づかれてチンタは殺害されました。
自分のせいでチンタを死なせたことを悔やんだ日岡は、相棒の瀬島に葛藤を打ち明けます。
しかし、ある日に日岡が瀬島の家に行くと、部屋から誰もいなくなっていました。
瀬島は公安のスパイで、県警上層部の弱みを握る日岡の動きを探っていたのです。
尾谷組からも信頼を得ていなかったと明かされた日岡は、完全に居場所を失ってしまうのでした。
結：上林と日岡の一騎打ち
日岡は、瀬島の情報提供からか県警本部に身柄を抑えられ、身動きが取れなくなりました。
一方、上林は日岡をおびき出すために、尾谷組へ奇襲を仕掛けて抗争に発展させます。
居ても立っても居られない日岡は、県警本部から逃走し、上林を取り押さえようと追いかけます。
やがて日岡と上林は、一騎打ちで命を賭けてお互いを捕えようとすると、県警本部がやってきました。
県警本部の元上司である嵯峨の横やりを受けて、日岡は嵯峨の銃を奪い、上林を射殺して騒動を無理やり納めました。
日岡は田舎の駐在所に左遷させられ退屈な日々を送っていると、二ホンオオカミの幻影を目撃し思わず追いかけるのでした。
【孤狼の血 LEVEL2】映画の結末・ラストとネタバレ部分の解説！
「孤狼の血 LEVEL2」の結末とネタバレに関わる部分の解説をしていきます。
改めて鑑賞する方や、初めて鑑賞する方の補助線になるように整理しました。
「孤狼の血 LEVEL2」映画の結末・ラストの詳しい解説
上林組と尾谷組の抗争が始まり、日岡と上林は命を賭けた一騎打ちに発展します。
やがて県警本部からやって来た嵯峨から日岡が銃を奪って、上林を銃殺し、事態は収まりました。
騒動の責任を取らされるように田舎に左遷させられた日岡は、絶滅したはずの二ホンオオカミの幻影を観て追いかける、という結末です。
本編のエンタメ路線とは裏腹の、抽象的なエンディングは観客の賛否が分かれました。
二ホンオオカミは、間違いなく前作の主人公である大上の象徴として登場しています。
悲惨な状況を大上が見守ってくれていたように受け取れるラストは、個人的には涙なしに観られませんでした。
信じていたのに…瀬島の意外な正体
今作から登場する新キャラクターの瀬島は、日岡の相棒として動く定年退職間近の中年刑事として登場します。
人懐っこい雰囲気と人情味ある話し方に、日岡も気を許していました。
しかし、瀬島の正体は、日岡の動向を探っていた公安のスパイだったのです。
捜査状況をすべて聞き出した瀬島は、日岡の前から姿を消しました。
誰もいなくなった瀬島の家を見て落乱する日岡を見ると、胸が苦しくなります。
ちなみに、警察はスパイのことを「エス（S）」と呼ぶそうで、瀬島のイニシャルも「エス（Seshima）」なので、登場した時から伏線が張られていたというわけです。
上林が目を潰す理由は？
上林は、怒りが頂点に達したときに、相手の目を潰すという暴行をしていました。
かなりグロテスクな行為ですが、上林は「見られる」ことにかなり強い拒否感を抱いています。
明確には示されませんが、原爆スラムで育った幼少期に、母親から憐みの目で見られることや差別的な視線が、トラウマになっているのではないでしょうか。
「見る」行為を物理的に封じ込めるために、目を潰していたのだと思います。
乱暴でグロテスク過ぎますが、上林の境遇は過酷なもので一概に否定しきれない余韻が残りました。
日岡が左遷させられた理由…狼の血は絶えたのか
日岡は、劇中のラストで田舎に左遷させられてしまいます。
警察上層部の弱みを握っていたことが原因で、本部からなるべく遠い場所へ左遷されたというわけです。
このまま田舎で燻ってしまうのか？と思ってしまいそうですが、日岡は「孤狼の血」の原作でもラストに田舎へ左遷されています。
原作の続編である「凶犬の眼」では、田舎で伝説のヤクザと出会い、警察とヤクザの関係性を学んでいくというストーリーでした。
日岡の物語は、まだまだ序章に過ぎません。
3作目では、また違った日岡の魅力が描かれることを期待しています。
【孤狼の血 LEVEL2】映画がひどいと言われる理由
「孤狼の血 LEVEL2」が、ひどいと言われている理由について解説しました。
過激さゆえに、あらゆる感想が飛び交っていますが、ひとつずつ検証していきます。
①前作より増した過激な暴力描写
まず最初に言われているのが、過激すぎる暴力描写です。
前作は、冒頭から豚のフンが登場する過激な始まりでしたが、グロテスクな残虐描写でいくと今作の方がきついかもしれません。
特に、上林が相手の目を潰すという暴力描写は、かなりえげつないものになっていて、直視できないと言う人も多かったようです。
「孤狼の血 LEVEL2」は、コンプライアンス重視の日本映画に一石を投じる目的もあるので、過激な描写は作り手も意図したものだと思います。
肯定的な立場の人からは、「容赦がなくていい！」と興奮している意見がよく見られました。
②原作にないオリジナル展開だから
前作の原作から大胆に脚色したラストの展開から、「孤狼の血 LEVEL2」は生まれました。
もともと原作にはないオリジナルストーリーのため、かなり大胆な展開になっているのは否めません。
よく言えばエンタメ性が高く、悪く言えば単純化されたストーリーは、賛否が分かれています。
上林の独り相撲についていけない、という人がいても仕方ないかもしれません。
ただ、前作のヤクザ同士の抗争が複雑に感じられた人には、極悪で痛快な展開を面白く感じているそうです。
③役所広司が演じた”大上”の不在
前作でも偉大な存在だった大上の不在を嘆く声も、否定的な立場の人からよく聞こえてきます。
絶妙なバランス感覚でヤクザとの関係を渡り歩く大上のような人物がいないからこそ、エンタメ路線に振り切らざるを得なかったのかもしれません。
ただ、「孤狼の血 LEVEL2」は、日岡が大上になれない「負け戦」の物語だと、作り手側も公言しています。
日岡の行動は、ことごとく後手に回って、エスとして使っていたチンタも巻き込んでしまいました。
確かに大上の偉大さには近づけていませんが、日岡のジレンマを描いた作品としてはこれ以上ないものだと思います。
また、作中で一切大上の姿を見せない潔さには、大上の存在に甘えないという空気を感じて、カッコよく感じました。
>やっぱり大上は偉大だった！「孤狼の血」1作目のあらすじを見る
【孤狼の血 LEVEL2】映画の相関図＆注目すべきキャスト！鈴木亮平の上林が怖すぎ…
「孤狼の血 LEVEL2」は、前作に引き続いて「広島仁正会」と「尾谷組」の対立を引き継いでいます。
対立する組織の図式に、出所した上林が加わりますが、大らかな時代の雰囲気に苛立ちを隠せません。
大上の亡き後、日岡がヤクザとのバランスをとっているという背景があります。
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①上林成浩/鈴木亮平
日本映画士に残る悪役の上林を演じたのは、鈴木亮平さんです。
「俺物語！」や「西郷どん」の激太りや、「天皇の料理番」での20㎏の減量など、役作りに賭ける情熱が知られています。
「TOKYO MER」や「シティハンター」などの話題作への出演が続いており、今最も勢いがある俳優です。
「孤狼の血 LEVEL2」では、極悪非道のヤクザ上林を演じ切って、日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞しました。
上林は、刑務所から出所したばかりで、仁義を重んじず自分勝手なヤクザの世界に憤りを感じています。
残忍な暴力が目立ちますが、原爆スラムで育った複雑な生い立ちも描かれていました。
②近田幸太/村上虹郎
日岡のスパイとして動くヤクザのチンタを演じたのは、村上虹郎さんです。
村上虹郎さんは、俳優の村上淳さんと歌手のUAさんの息子で、2014年に芸能界デビューを果たしました。
「今際の国のアリス」、「東京リベンジャーズ」などの話題作に出演する、若手再注目株です。
「孤狼の血 LEVEL2」で演じたチンタは、韓国系のルーツを持ったヤクザで、悲惨な最期を迎えます。
登場した瞬間から、「かわいいけど、絶対死ぬな」という儚いオーラが漂っていました。
③瀬島孝之/中村梅雀
日岡の相棒である刑事の瀬島を演じたのは、中村梅雀さんです。
中村梅雀さんは、歌舞伎役者と俳優、ベーシストというあらゆる業界で活躍する才能に溢れています。
1960年代のデビューから下積みを重ねて、今ではメディアで観ない日はないというくらいの大活躍です。
「孤狼の血 LEVEL2」で実は瀬島がスパイだった、という展開に驚いた人は多いのではないでしょうか。
中村梅雀さんの柔らかな顔つきを逆手に取った、見事な演技とどんでん返しでした。
【孤狼の血 LEVEL2】映画の見どころ・重要ポイントを解説
「孤狼の血 LEVEL2」の見どころ、重要なポイントを紹介しました。
作品の魅力が伝わるように解説したので、参考にしてみてください。
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①日岡の負け戦
前作で亡くなった大上の後を継ぐように、「孤狼の血 LEVEL2」では日岡が主人公になりました。
日岡が勇ましい格好で、ヤクザとのバランスをとっている姿を見ると、泣けてきます。
しかし、すべては日岡の勘違いというか、大上の足元にも及んでいなかった、という展開が用意されていました。
今作が前作より物足りないという声が聞かれますが、そもそも日岡は「物足りない人物」なのです。
瀬島に裏切られ、ヤクザから信頼されていないことが分かり、肩を落とす日岡に寄り添うのは観客しかいません。
作り手側も「日岡の負け戦」と呼んでいました。
上林という目立ったキャラクターもいますが、日岡のレベルアップ中の物語と捉えることで、作品の魅力が伝わってくるのではないでしょうか。
②ヤクザと差別
全体的にエンタメ路線に振り切った今作ですが、ヤクザの背景という点では深みが増していると思いました。
ヤクザになった上林やチンタの背景に、韓国系のルーツがあると示されています。
上林は、誰かに「見られる」ことを激しく嫌悪しますが、差別が向けられてきたことを暗示しているのではないでしょうか。
暴力、殺人は全く肯定できるものではありませんし、だから仕方ないでは到底片付かない問題です。
しかし、ヤクザにならざるを得なかった人々を、映画ならではの語り口で「孤狼の血 LEVEL2」は描いていたと思います。
③実は一番怖い人…
今作の日岡は、県警本部の瀬島、尾谷組など、とにかく色んな人に裏切られます。
しかし、しれっと裏切られたことにも気付いていないような人物がいるのではないでしょうか。
瀬島の妻として登場し、美味しいタコ飯を作っていた宮崎美子さん演じる瀬島百合子です。
瀬島が偽名であったことは映画の終盤で示されますが、となるとこの百合子という人は一体誰なのでしょうか？
真緒から仕返しを受ける瀬島とは違い、百合子は跡形もなく物語から姿を消します。
映画を鑑賞した人からは「一番怖いのは宮崎美子説」が流れていました。
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【孤狼の血 LEVEL2】ひどい理由は過激な暴力描写やエンタメに振り切ったせい？
- 「孤狼の血 LEVEL2」は過激な暴力描写が話題になった映画
- 鈴木亮平の演技が高い評価を受けた
- 残虐すぎる描写など一部で賛否が分かれている
「孤狼の血 LEVEL2」は、前作から3年後を描いたオリジナルストーリーのヤクザ映画です。
松坂桃李さんと鈴木亮平さんが共演しており、特に鈴木さんの演技が高く評価されて映画賞を総なめしました。
一方で、過激すぎる暴力描写やエンタメ路線になったストーリーによって、賛否が分かれています。
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