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【正体】映画は実話?元ネタの事件はあるか&ドラマとの違いやあらすじをネタバレ解説!

染井為人先生による同名小説を原作としながらも、大胆な脚色が見どころの藤井道人監督による映画版「正体」

冤罪・誹謗中傷・貧困・警察の腐敗などなど、社会問題を扱いながら描かれる凄惨な殺人事件。

しかし本作は、紛れもなくエンタメです。

日本という国の不甲斐なさにムカつくもよし、これがフィクションということに安堵するもよし…ふつうに横浜流星のドアップ五変化をメロメロ見つめちゃうのもよし!

原作を柔軟に解釈した、映画「正体」を解剖します!

※この記事には映画の結末・ラストのネタバレを含む可能性があります。未鑑賞の方はご注意ください。

作品名正体
公開年2024年
上映時間2時間
監督藤井道人
脚本小寺和久
藤井道人
音楽大間々昂
キャスト横浜流星
吉岡里帆
森本慎太郎
山田杏奈
山田孝之
ほか
配給松竹
目次

【正体】映画は実話?あらすじをネタバレ解説

【結論】「正体」映画は実話ではないが、原作者の執筆動機になった事件はある…

とある、雪の降る夜のこと。

一家惨殺事件を起こしたとされる死刑囚・鏑木(かぶらぎ)慶一が、護送中に脱走します。

鏑木(演/横浜流星)の逃走は、ここから1年以上続くこととなり…。

起:ベンゾー

正体の和也とベンゾー
(C)2024 映画「正体」製作委員会

野々村和也(演/森本慎太郎)は、牛久保土木という建設会社で働いています。

飯場で仲間と寝食をともにし、安すぎる賃金で肉体労働にはげむ日々。

仕事仲間の素性はよくわかりません

スネに傷のある人も多く、互いに詮索しないのが暗黙の了解なのです。

ある日、和也は仕事中の事故で足を骨折してしまい、休職を余儀なくされます。

借金を抱える和也に「労働基準監督署に申請すれば国から金がもらえる」と進言したのは、遠藤という同僚でした。

遠藤は、分厚いメガネ姿から陰で“ベンゾー”と呼ばれる人物です。

和也はベンゾーを連れ上司にかけあいますが、無視されるどころか暴力でのめされる始末。

意気消沈する和也でしたが、ベンゾーが翌日2万円を握りしめて和也のもとへやってきます。

自らの正当性を主張して、腐敗した会社からお金を引き出したらしいベンゾー。

この一件で和也はベンゾーのやさしさにふれ、彼に対し心を開いていきます。

しかし、ある日、たまたま見た報道番組で鏑木死刑囚の脱獄を知った和也。

報道される鏑木の顔写真がベンゾーに似ていると思った和也は、その夜ベンゾーを部屋呑みに誘います。

「酒を呑んだことがない」というベンゾーと、ひとしきり呑んだ和也でしたが、やはり疑念は拭えず110番に通報。

結局、何も話すことなく通話を切った和也でしたが、その一部始終を見ていたベンゾーは、その瞬間から飯場をはなれ、姿を消してしまいました。

承:那須隆士

正体の紗耶香と那須
(C)2024 映画「正体」製作委員会

ネットメディア編集者の安藤沙耶香(演/吉岡里帆)は、痴漢冤罪の被害を受けている父・淳二(田中哲司)をサポートする日々。

無罪を主張しても、なかなか覆されない結論に辟易しながらも、沙耶香は父を信じています。

ある日、契約しているフリーライター・那須隆士が、沙耶香の勤める会社へやってきました。

那須は文才があり、沙耶香が担当するネットメディアの中でも、つねに上位のPV数を稼ぎます。

しかし、謙遜に終始する那須は、その金髪や、整った顔立ちから受けるイメージとはちがったキャラクターでした。

大きなキャリーバッグを持った那須に違和感をもった沙耶香は、彼を居酒屋に誘います。

ガツガツと食事に食らいつく那須に、沙耶香は確信をもって「あなたネカフェで寝泊まりしてる?」と問いました。

那須には、家がなかったのです。

その晩、慣れない酒に酔った那須はつぶれ、沙耶香の自宅へと運ばれます。

それから、なしくずし的に同居を始めるふたり

那須が家事の全般を担い、沙耶香を支える日々は、ふたりにとって穏やかな幸せでした。

しかしある日、父の事件を追う記者が「那須は、逃走犯の鏑木だ」と沙耶香に詰め寄ります。

薄々、那須の正体に感づいていた沙耶香は記者を追い払いますが、情報はすぐに警察のもとに。

警視庁捜査一課の又貫征吾(演/山田孝之)は、鏑木の脱獄について大きな責任を負わされる人物。

沙耶香の自宅を訪れた又貫は、必死の執念で沙耶香に食らいつきます。

一度は又貫の目をごまかした沙耶香でしたが、隠れていた鏑木をついに見つけ、大捕物に。

しかし、沙耶香の制止により、又貫はまたも鏑木を取り逃がしてしまうのです。

転:桜井翔司

正体の桜井と舞
(C)2024 映画「正体」製作委員会

長野県にある有料老人グループホーム・アオバで働く酒井舞(演/山田杏奈)。

舞は、東京での仕事に挫折し、地元である長野に落ち着いていました。

アオバには認知症を抱えた入居者も多く、決して多くないスタッフで切り盛りするのは至難の業です。

しかし、最近アオバにスタッフとして入ってきた桜井という男が、かなりの敏腕。

仕事の手際もよく、入居者たちにも人気で、なによりとてつもない美形なのです。

例にもれず、桜井に淡い思いを寄せる舞は、ある日「地元を案内する」という名目で、桜井とのデートを取りつけます。

絶景の雪景色の中、舞はこっそり桜井を動画に収めます

友人に自慢したい一心で、桜井の動画をSNSに載せた舞。

その動画は「逃亡犯の鏑木に似ている」と大拡散されてしまいます。

じつのところ舞は、桜井=鏑木説に現実感をもたせる“桜井の秘密”を知っていました。

それは、アオバの入居者である井尾由子(演/原日出子)と、桜井が夜な夜な話し込んでいるということ。

由子こそ、鏑木に死刑が言い渡された一家惨殺事件の当事者であり、一家で唯一の生存者だったのです。

由子は、そもそも患っていた若年性認知症に輪をかけて、事件の衝撃から記憶を失っていました。

桜井はボイスレコーダーを片手に、毎晩由子の部屋を訪れ「思い出してほしい、僕の無実を証言してほしい」と頼みこんでいたのです。

舞がアップしたSNSの投稿は、すぐさま刑事・又貫のもとへと届き、アオバにはたくさんの警察車両が急行します。

しかし、桜井は舞を人質にとり、アオバに立てこもったのです。

結:鏑木慶一

正体の紗耶香
(C)2024 映画「正体」製作委員会

和也と沙耶香、そして紗耶香の父・淳二のもとにも、アオバでの立てこもり事件の一報が届きます。

テレビ中継を見守るほかない面々。

アオバ内部には、舞と鏑木、そして事件の生き残りである由子と入居者の数名が残されています。

そこで、舞のSNSで急遽ライブ配信が始まりました。

配信に映る鏑木は、由子の記憶に語りかけるように、何度も懇願します。

一家惨殺事件の当日、鏑木はたまたま現場の前を通っていました。

悲鳴を聞いた鏑木は、事件のあった家を訪問。

そこにはおびただしい量の血液と、微笑む真犯人・足利清人(演/山中崇)の姿がありました。

パニックになった鏑木は、被害者の背に刺さった刃物を抜きます。

そこに警察が到着したことにより、凶器を手にした鏑木は、犯人に仕立て上げられてしまったのです。

鏑木の必死の問いかけに、由子はかすかに記憶を取り戻します。

この配信を見た又貫は、鏑木の話を信用に値すると判断しますが、上司に突入を命ぜられ、アオバに突入。

鏑木は警察の発砲を受けました。

…アオバでの大捕物を終え、数日が経ったころ、和也と沙耶香、その父・淳二、舞は一堂に会していました。

鏑木の無実を主張するため、心やさしい彼の正体を知る各々が集結したのです。

しだいに、沙耶香が働くメディアの上司・後藤(演/宇野祥平)も、鏑木の無罪を信じるように。

後藤が世間に真偽を問う記事を発表したこと、紗耶香たちが必死の弁護をしたことで、世論も少しずつ変わり始めます

又貫もまた鏑木と向かいあい、鏑木の冤罪を確信。

誤認逮捕の可能性を、上司に無断で発表します。

又貫は、警察の名誉よりも、正義の在りかに寄り添ったのです。

鏑木は、逃亡から819日目、ついに無罪を勝ち取るのでした。

【正体】映画のネタバレ部分の解説

続いて、映画のネタバレ部分の解説をしていきます。

※↑リンクをクリックで知りたい項目へ移動します。

①主人公・鏑木が脱走した理由・目的は

正体の鏑木
(C)2024 映画「正体」製作委員会

正しいことを正しいと主張すれば、信じてくれる人がいると、信じたかったから。

ほとんど覆ることはないといわれる死刑判決を受けた鏑木

聞く耳をもたず、決めつけの捜査をおこなう警察への信用が地に落ちた鏑木は、警察の外に助けを求めたのです。

綿密な計画をたて脱獄を成功させると、資金集めのため飯場へ。

人目につかずに金を稼げるフリーのライターに転職したのち、すんでのところで又貫の手をすり抜け、アオバで介護職に就きます。

最終的に、長野の由子のもとを訪ねて証言を引きだすことが目的であったでしょうが、すごいのは鏑木の万能具合。

何をやらせてもそつなくこなすどころか、おごり高ぶらず、人柄も良い。

有能で素敵な人物を、冤罪で拘束し社会的に追い詰めたことに、本作のいたたまれなさが凝縮されています。

②事件の真犯人は誰…

当初、鏑木の模倣犯とされていた足利清人です。

鏑木の逃亡から332日目、鏑木が起こしたとされる事件と酷似した惨殺事件が発生します。

犯人の名は足利清人

凶器の種類まで一緒だったこの事件ですが、警察は鏑木の事件と本件を別人の犯行と判断。

じっさいに足利が模倣していたのは、鏑木ではなく自分自身でした。

③鏑木の「この世界を信じたかった」の意味

正体の鏑木2
(C)2024 映画「正体」製作委員会

「なぜ逃げた?」という又貫の問いに、「信じたかったんです、この世界を」と答えた鏑木。

前述のように、鏑木は“信じる気持ち”によって生かされていました

善意での行動が仇となり、無実の極刑を言い渡された鏑木。

それでも、もともと優秀で、心優しく、のびしろを秘めた人物だったからこそ、鏑木は未来をあきらめませんでした。

どんなに警察内部の腐敗を目にしても、無理な立場に立たされても、最後まであきらめなかった鏑木。

そして、逃亡中に出会った善良な人々にふれ、鏑木は、自らの定義する“世界”を確信したのでしょう。

④鏑木は無実になったのか…

逆転無罪を勝ち取りました。

映画の判決シーンは、無音・スローモーションで提示されます。

判決のゆくえを見守る紗耶香の背後で、巻き起こる拍手喝采。

映画ならではの、想像力を刺激する編集によって、観客が鏑木の涙に誘われるつくりになっていました。

原作小説と結末はちがいますが、映画というものが存在する意味を果たす改変だったと思います(後述)。

【正体】映画は実話?元になった事件はある?

続いて、原作者の執筆動機となった事件や、過去にじっさいに起こった事件についてふれていきます。

執筆動機となったのは富田林署からの逃走事件

原作者の執筆動機となったのは、2018年に起きた富田林署からの逃走事件です。

性的暴行や窃盗など20以上の罪で逮捕されていた男が、弁護士との接見中に脱獄した事件。

男が、盗んだ自転車で日本一周を企んでいたこと、48日間も逃走を続けたことで大きな話題となりました。

実際の犯人は卑劣な人物であるのに対し、「正体」で描かれる鏑木は冤罪被害者。

富田林署の事件が執筆動機ではありながら、単なる動機づけに他ならない印象です。

ちなみに…

小説の中で、鏑木が働く飯場や介護職は、原作者の染井先生が経験したことのある職業なのだそう。

整形をして逃亡を続けた犯人は過去にもいる

イギリス人留学生を殺害した市橋達也や“7つの顔を持つ女”と呼ばれた福田和子など、過去に長期間逃亡していた犯罪者は多くいます。

また、逃亡期間に比例して報道合戦も過熱し、われわれの印象にも残りやすいでしょう。

しかし、これらの事件は「正体」という作品群には関係ありません

ちなみに…

ディーン・フジオカ監督「I am ICHIHASHI 逮捕されるまで」や石田えり監督「私の見た世界」など、市橋と福田が起こした事件をベースとした映画は存在しています。

死刑確定>無罪へ覆った袴田事件

30歳のときに冤罪で死刑が確定し、58年が経った88歳でようやく逆転無罪を勝ち取った袴田巌さん

ご家族と、支援団体の粘りにより、長すぎる時間が経ったものの、無罪判決を手に入れました。

袴田さんが死刑判決を受けた経緯は、警察による隠ぺい工作と自白強要による、前代未聞の地獄絵図。

無罪を勝ち取った現在も、袴田さんは、長年の刑務所生活で精神状態、および身体的に異常をきたしており、多額の刑事補償金も空しい存在に。

長年袴田さんを支え続けている実姉のひで子さんは、90歳を越えた現在もはつらつと弟をケア。

「せめて5年でもいいから長生きして、巌を自由に生かしたいと思っています」とBBCに語っています。

【正体】原作は染井為人の長編小説

正体 コミックシーモア
引用元:コミックシーモア

「正体」の原作者である染井為人先生は、芸能事務所でマネージャーとして働いたり、ミュージカルのプロデュースをしたりという異色の経歴の持ち主。

脚本にふれる機会が多かったことが影響しているのか「正体」に関しては、非常に脚本的かつ読者ライクな語り口で、読みやすい作風です。

映画版・ドラマ版同様に和也や紗耶香、舞など鏑木だけでなく周辺人物の背景をしっかり描いているのも特徴。

原作だけで体感できる衝撃のラストは賛否両論ながら、染井先生のシビアな選択にはしっくり感もありました。

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【正体】映画とドラマの違いは?ネタバレあり解説

正体 U-NEXT
引用元:U-NEXT

続いて、亀梨和也さんが主演のドラマ版「正体」について掘り下げます。

①主人公・鏑木の年齢が違う

脱獄したときの鏑木の年齢は、原作は19歳、映画版は21歳、ドラマ版は32歳とさまざまです。

中田秀夫監督と亀梨さんのタッグといえば「事故物件 恐い間取り」の印象も強烈で、ドラマ版「正体」は亀梨さんを中心とする座組ありきだった可能性も。

亀梨さんの実年齢と外見とを鑑みての年齢変更なのかもしれません。

実際、原作でも鏑木の年齢はさほど重要でないポイントです。

原作・ドラマ版・映画版いずれのバージョンでも鏑木の精神性は成熟したものです。

観客に対し単に「若いのにしっかりしている」という印象をもたせたいのであれば、30代でも違和感は感じません。

ちなみに…

年齢の他にも“鏑木の首の左後ろに痣がある”など、ドラマ版特有の設定もありました。

②鏑木の潜伏箇所の違い

原作小説から鏑木は、さまざまな職場を転々として潜伏していました。

和也と出会う建設現場での仕事や、舞と出会う介護施設・アオバ、紗耶香の家は映画・ドラマ共通の潜伏場所。

原作とドラマ版で共通していた山形のパン工場は、映画版では“宮村水産”という水産加工場に変更されています。

顔を隠せる衛生服が、鏑木には好都合だったのでしょう。

また映画版では、山形で起こった新興宗教のエピソードは省略されていました。

ちなみに…

原作にある長野の旅館への住みこみに関するエピソードは、ドラマ・映画ともに省略されているものの、映画版のアオバは長野県にあったりと、原作の重要なポイントは逃していませんでした。

③弁護士渡辺の違い

原作では弁護士・渡辺がメインとして描かれる旅館のエピソード。

映像ではまるまる省略されていることから、渡辺が登場する場面をあらたに作った映画・ドラマ版。

映画版では紗耶香の父という設定に変更されており、原作よりも距離感を縮めて描かれています。

またドラマ版は、鏑木が、異様な姿の渡辺と道ばたですれ違うオリジナル展開。

自殺を図ろうとしていた渡辺を気にかけ、缶コーヒーを買って落ち着かせた鏑木の人情味が、のちに効いてくるのです。

④刑事又貫の違い

原作では30代とされていた又貫。

また原作では、年配の刑事が又貫に同行している設定でもありましたが、ドラマ版では音尾琢磨さんが又貫を演じ、若手の刑事がサポートにまわっています。

変わって映画版では、山田孝之さん演じる又貫の置かれるストレスフルなバックボーンを掘り下げる工夫も。

警察組織の腐敗が独立したシーンとして描かれたり、成年年齢引き下げにまつわるエピソードもあったりと、又貫を多面的にした印象です。

それにともなって又貫の内面も、ドラマと映画ではちがいます。

映画版の又貫は、鏑木の冤罪に気づく設定になっていました。

⑤結末の違い

原作小説とは異なり、映画・ドラマ版では鏑木本人に逆転無罪判決が下されます。

小説を出版した際に、読者から少なくない批判を受けたという染井先生。

それは、鏑木が警察の銃弾に倒れるバッドエンドによるものでした。

ドラマ版で、生きながらえた鏑木が無罪となる結末に変更された際、染井先生は以下のコメントを寄せています。

亀梨さんを始めとしたキャストの皆様、中田監督を始めとしたスタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。純粋に楽しませていただきました。 きっと鏑木くんは僕のことを恨んでいるだろうけど、ドラマチームの皆様には感謝していることでしょう。 最後に、WOWOWに敬意を込めて、心からの拍手を

染井為人公式X

染井先生の中では鏑木の死が重要であるとともに、また鏑木の命が誰かの手によって救われることも、喜ばしいことのよう。

ドラマ版には、裁判官が鏑木に謝罪する一幕も。

自戒の意味をこめて、極刑の恐怖にさらしたことを謝る展開は素敵でした。

映画版は、ドラマ版のやさしい選択を受け、同様に逆転無罪判決がエンディングとなっています。

映画ならではの無音の演出により、さらにドラマティックな法廷となっていました。

【正体】映画の見どころ&重要ポイントを紹介!

最後に、映画の見どころや重要なポイントを3つ紹介します!

※↑リンクをクリックで知りたい項目へ移動します。

①原作へのリスペクト

原作の染井先生が、物語の改変に寛容だったこともあり、ドラマ版・映画版それぞれが異なった魅力を携えています。

ドラマ版は、万人へのわかりやすさを重視したディテールの変更と、話数を利用した人物の掘り下げが見どころ。

一方で映画版は、原作に登場する物や人名に忠実であるほか、小説を読み進めているような没入感を醸す、心情的な演出が見どころです。

どちらも、原作へのリスペクトあっての改変

原作がもつ雰囲気やメッセージ性をそのままに、新しい表現として「正体」が再構築されていた印象です。

②衣装やヘアメイクのこだわり

正体の鏑木
(C)2024 映画「正体」製作委員会

逃亡を続ける鏑木ですので、目立つわけにはいかない。

しかしキャンバスが横浜流星では、周囲になじませるのもひと苦労というもの。

スタイリストの皆川美絵さんとヘアメイクの西田美香さんは、5パターンの鏑木を、心情面から構築したそう。

寝不足だろうし、ストレスも多い鏑木。

美容室にも行けないだろうし、人目のつく時間に入浴できないとなれば、いつも清潔を保てるわけもない。

表面を飾るのではなく、鏑木という人物の内面をあらわしたメイクとスタイリングが、物語に深みをもたせています。

③小説とはちがうエンディング

前述してきた通り、原作小説では死亡した鏑木が、ドラマ・映画版では生きたままになっています。

小説では、世の中の不条理とどうしようもなさが描かれていました。

鏑木を好青年にすることで、世界はいかに狂っているかを強調するつくり。

一方で、映像作品の存在意義を考えたとき、見る人の希望となれば美しい、ということはあると思います。

映画というものに厳しい現実ばかりを追い求めるのではなく、ファンタジーだとしても、より良い未来を期待したい、そんな藤井監督の思いを感じました。

【正体】映画は実話ではないが、動機になった事件はある!

  • 富田林署からの脱走事件が、原作者の執筆動機
  • 映画とドラマは、小説のラストとは異なる
  • 冤罪で死刑判決を受けた人は実在する

小説に始まり、ドラマ・映画と派生した名作ミステリー「正体」。

映画版では刑事・又貫の存在感も増し、より世界観に奥行きが出ていました。

現実に起きた事件を執筆動機としながらも、作品はあくまでフィクション。

それぞれの監督が選択した、映像作品における最適解を、各種サブスクで堪能してみてください!

現在映画版「正体」は、Netflixで視聴可能です♩

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