スマートフォンがあればどこでもインターネット接続ができるテザリングは、とても便利な機能です。モバイルWi-Fiや光回線のように、新たに契約を結ぶ必要がないため、手軽に使えるインターネット回線として多くの方が利用しています。
しかし、「テザリングだけで日常生活を快適に送れるのか」という点が気になる方も多いのではないでしょうか?
テザリングのメリットとデメリット、大手キャリアのテザリング料金、さらには各用途とテザリングの相性を徹底的に解説しているので、インターネット回線選びの参考にしてください。
テザリングについて知っておこう
はじめに、テザリングについて詳しく知っておきましょう。テザリングを一言で説明すると、以下の引用文のようになります。
テザリングとは、スマートフォンなどのデータ通信を利用して、パソコンやタブレット端末、ゲーム機器などをインターネットに接続することで、主にスマートフォンのオプションサービスとして提供されている。
参考:テザリングとは? iPhoneやAndroidの設定方法や注意点、モバイルルーターとの違いを解説 – TIME&SPACE by KDDI
スマートフォン1つでインターネット回線を用意できるため、外出先でタブレットやパソコンなどの端末をインターネットに接続するときに活躍します。
テザリングのメリットとデメリット
スマートフォンでインターネット回線を用意できるのは魅力ですが、他にどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
ここでは、テザリングのメリットとデメリットを解説していきます。
メリット
テザリングのメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 場所を選ばず利用できる
- オプション加入だけで利用できる
- 工事不要ですぐに使える
それぞれについて、詳細を確認していきましょう。
場所を選ばず利用できる
テザリングの最大のメリットは、「場所を選ばず利用できる」点です。
インターネット回線の代表的な存在として「光回線」が挙げられます。光回線は回線品質が極めて高く、どんな用途でも快適に使える点が魅力ですが、「自宅でしか使えない」点がデメリットです。
しかし、テザリングはスマートフォン1つあればどこでもインターネット回線を用意できるため、場所を選ばずに利用できます。
最近では、リモートワークなど外出先でインターネット回線を使う機会が多いため、自宅以外で利用できる点は大きなメリットです。
オプション加入だけで利用できる
テザリングはスマートフォンを契約している事業者が提供するサービスであるため、新しく契約を結ぶ必要はありません。各事業者のテザリングオプションに加入するだけで利用できるため、簡単に利用を始められる点がメリットだといえるでしょう。
しかも、テザリングオプションは月単位で変更可能で、解約金も一切不要です。光回線やモバイルWi-Fiの場合、「2〜3年契約」が基本で、なおかつ「数万円の解約金」が発生するため、契約の際は慎重にならざるを得ません。
「使わない月はオプションを外す」といった使い方ができるため、月ごとにインターネットの利用頻度にばらつきがある方にとっては、テザリングは魅力に感じるでしょう。
また、事業者によっては、テザリングそのものをプランに組み込み、オプションではなく標準で利用可能にしている場合もあります。自分の契約している事業者がどのようなシステムなのか、事前に確認しておきましょう。
工事不要ですぐに使える
光回線は利用を始める前に、光ファイバーケーブルを自宅に引き込む「開通工事」を行う必要があります。したがって、契約後にすぐに使えるわけではなく、1カ月〜2カ月程度待たなければいけません。
しかし、テザリングはオプション加入だけですぐに使えるようになるため、最短で即日利用も可能になります。しかも、最近はインターネット上でオプション加入の手続きができるため、店舗に足を運ぶ必要さえないのです。
一方で、テザリングオプションではなく、プランそのものの変更は翌月からの適用になるため、この点には注意しましょう。
デメリット
続いて、テザリングのデメリットについて以下の点を解説していきます。
- コスパが悪い
- 回線品質が不十分
- バッテリー消費が激しい
- 通話中の利用ができない
コスパが悪い
インターネット回線は毎月料金が発生するため、コスパが気になる方は多いでしょう。結論からいえば、加入するプランやデータ通信量にもよりますが、テザリングのコスパは良くありません。
確かに、テザリングオプション自体は、無料〜550円で利用できるため、これだけ見ればモバイルWi-Fiや光回線よりもコスパが良いと考えられます。
しかし、テザリングを使って日常生活の色々な作業をしようとすれば、データ通信量の消費は激しくなるため、大容量プランの契約が必要になるでしょう。
一方で、各キャリアの大容量プランに追加で1,000円〜2,000円程度支払えば、モバイルWi-Fiや光回線といった、「使い放題」のインターネット回線が手に入ります。
テザリングはコスパが良いと思われがちですが、インターネットを頻繁に利用する方にとっては他の回線の方がコスパが良くおすすめです。
回線品質が不十分
用途にもよりますが、テザリングの回線品質だと不十分に感じる方もいるかもしれません。
テザリングは、各事業者が提供するLTE回線を用いてインターネット接続を行いますが、LTE回線の下り(ダウンロード)最大通信速度は150Mbpsです。
そして、日常生活で想定される各作業に必要な下りの最大通信速度を、以下の表で確認してください。
端末での作業 | 必要ダウンロード速度 |
---|---|
LINE受信 | 1Mbps |
Webページ閲覧 | 1Mbps |
ビデオ通話 | 3Mbps |
YouTube視聴(720p) | 3Mbps |
YouTube(1,080p) | 5Mbps |
4K動画の再生 | 25Mbps |
参考:快適なインターネットに必要な上下の速度目安を目的別に整理! – NURO
このように、テザリングの下り最大150Mbpsの通信速度があれば、LINEのやり取りやYouTube視聴といった作業は、十分快適に行えます。
一方で、オンラインゲームや大人数でのビデオ通話など、より大容量で安定した通信を必要とする作業では、テザリングでは不十分です。
したがって、「どんな用途にテザリングを使うのか」をハッキリさせた上でテザリングを利用することで、失敗を防げるでしょう。
バッテリー消費が激しい
テザリングはスマートフォンが長時間にわたり電波を飛ばし続けるため、バッテリー消費が非常に激しいです。スマートフォンのバッテリーが切れてしまうと、テザリングだけでなく電話やLINEも使えなくなってしまうため、日常生活に支障が出てしまいます。
したがって、テザリングの長時間の使用が前提なら、モバイルバッテリーの携帯が必要不可欠です。
また、スマートフォンが熱を持つため、本体やバッテリーに与える影響も懸念されます。テザリングを頻繁に使うなら、テザリングと同様に携帯性が高いモバイルWi-Fiを契約した方が良いかもしれません。

通話中の利用ができない
テザリングはスマートフォンで通話している最中は使えなくなるため、この点をデメリットに感じる方もいるかもしれません。
通話中にインターネット接続ができないのはもちろん、電話を終えたら再度接続作業を行わなければいけないので、非常に手間がかかります。
そのため、電話をスマートフォンで頻繁に行う場合、テザリングはあまりおすすめできません。
大手3社のテザリングを徹底比較
テザリングのメリットとデメリットを解説しましたが、続いて大手3社のテザリングを徹底的に比較していきます。
オプション詳細や料金が気になる方は、参考にしてください。
docomo
まずはdocomoからです。docomoはテザリングをほとんどのプランで無料にしており、スマートフォンを契約すれば、最初から自動でテザリングができるようになっています。
有料にしている事業者もある中で、無料でテザリングができる点は大きく評価できます。月々数百円の差ではありますが、スマートフォンの2年契約で考えるとおよそ1万円の違いが生まれるので、少しでも安く利用できるのが嬉しいです。
au
続いてauですが、従来までの料金プランでは550円の有料オプションとして提供されていました。該当するプランは以下の通りです。
- auフラットプラン20N/25 NetflixパックN
- auフラットプラン20/25 Netflixパック/30
- auフラットプラン5(学割専用)
- auピタットプラン
- データ定額20/30
- U18データ定額20
一方で、上記以外の新たに提供されているプランでは、docomoと同じように無料で利用可能です。利用の際は申し込みが必要になるため、オンラインか電話、実店舗で契約をしてください。
SoftBank
SoftBankのテザリングオプションは、基本的には550円の有料オプションになります。一部以下で示すプランのみ、無料としています。
- データ定額ミニ 1GB/2GB
- データ定額(おてがるプラン専用)
- データ定額 5GB
- データ定額S(4Gケータイ)
これら以外のプランでは有料になるため、3大キャリアの中では最もテザリングが利用しにくいといえます。
日常的なインターネット利用はテザリングで十分?
ここからは日常生活を送る上で、以下に示す用途ごとのテザリングの適性を解説していきます。
- LINEやメール
- LINE通話
- ビデオ通話
- Webページ閲覧
- SNS閲覧
- 動画視聴
- リモートワーク
- オンラインゲーム
自分がテザリングで利用予定の用途を中心に確認していきましょう。
LINEやメール
多くの方が日常的に行うのが、テキストメッセージの送受信です。LINEのやり取りが中心ですが、これらの作業はテザリングでも全く問題なく行うことが可能です。
また、1つのメッセージを送信するために必要なデータ通信量はほとんど0に近いため、データ通信量の上限の心配も不要です。テザリングでパソコンでのメールのやり取りを頻繁に行う場合でも、同様に気にすることはありません。
以上より、テキストメッセージを用いたメール、LINEは、テザリングとの相性は良いといえます。
LINE通話
続いてLINE電話です。テキストメッセージよりも消費するデータ量が多いため、まずは時間あたりのデータ通信量を確認しておきましょう。
通話時間 | データ通信量 |
---|---|
1分 | 0.3MB |
10分 | 3MB |
30分 | 9MB |
1時間 | 18MB |
参考:LINE通話の通信量・ギガ数は? 通信料を節約して電話する方法を大公開! – LINE MOBILE
このように、LINE電話はおよそ1時間で20MB程度のデータ通信量となっています。つまり、50時間程度で1GBを消費することとなるため、テザリングで1日数時間の電話を1カ月にわたりしない限りは、LINE通話でデータ容量の上限を圧迫することはないでしょう。
以上より、テザリングとLINE電話の相性は悪くないといえます。SkypeやZoomの音声通話でも同様であるため、参考にしてください。
ビデオ通話
続いてビデオ通話です。最近ではリモートワークが普及し、Zoomやチャットワークでビデオ会議を行うことが一般的になりつつあるため、LINE電話よりもこちらの方がテザリングで行う場面が多いかもしれません。
ビデオ通話におけるデータ通信量を以下の表で確認してください。
通話時間 | データ通信量 |
---|---|
1分 | 5.1MB |
10分 | 51MB |
30分 | 153MB |
1時間 | 306MB |
参考:LINE通話の通信量・ギガ数は? 通信料を節約して電話する方法を大公開! – LINE MOBILE
映像のやり取りが必要な分、データ通信量は通常の通話よりも多いです。3時間程度で1GBを消費してしまうため、テザリングでビデオ通話を行う場合は注意が必要だといえます。
なお、テザリングを使ったインターネット接続は安定性に難があるため、そもそもビデオ通話にはあまり向きません。
途切れ途切れになったり、映像がかくついたりしてしまっては、仕事に支障をきたす可能性があるため、より高い品質のインターネット回線を用意すべきだといえます。
Webページ閲覧
続いてWebページの閲覧ですが、スマートフォンの場合「300KB(0.3MB)」程度のデータ通信量を消費します。
参考:[モバイルデータ通信]「7GB」のパケット通信量でどのようなことができますか? – SoftBank
テザリングを使ってパソコンやタブレットでWebページを閲覧する場合、画面サイズや情報の量が大きくなるため、データ通信量はこれより多くなる傾向にあります。
それでも、Webページの閲覧だけで数GBを使い切ることはありませんから、テザリングとの相性は良いです。日常的にテザリングを使ったネットサーフィンを行う方は、快適に楽しめるといえます。
SNS閲覧
続いてSNS閲覧について確認していきましょう。最近はさまざまなSNSがありますが、より多くのデータ通信量が必要な、動画中心のSNS「TikTok」を例にとって解説していきます。
時間 | データ通信量 |
---|---|
10分 | 90MB |
30分 | 270MB |
1時間視聴 | 540MB |
2時間 | 1080MB |
参考:YouTubeとTikTokの動画1時間あたりの通信量・ギガ数は? – LINE MOBILE
TikTokの場合、2時間でおよそ1GBを使い切る計算になります。そのため、写真中心のInstagram、テキスト中心のTwitterでは、より少ないデータ消費量で楽しむことが可能です。
したがって、1日数十分程度のSNS利用なら、テザリングでもデータ量をそれほど気にすることなく利用できます。一方で、過度に利用するとデータ量を圧迫する原因になりますから注意しましょう。
動画視聴
テザリングを使って行う用途のうち、多くの方が気になるのが動画視聴だと思います。「テザリングで接続したタブレットで動画を見たい」といった用途が想定されますが、この場合どの程度のデータ通信量を消費するのでしょうか?
ここでは、画質ごとのデータ通信量を示すので、参考にしてください。
画質 | 5分間 | 1時間 |
---|---|---|
360p | 27MB | 324MB |
480p | 51MB | 612MB |
720p | 88MB | 1GB |
1,080p | 171MB | 2GB |
参考:YouTubeとTikTokの動画1時間あたりの通信量・ギガ数は? – LINE MOBILE
このように、動画視聴は他の用途と比較して、データ通信量の消費が段違いです。
「少し画質を落として視聴すれば問題ない」と思われる方もいるかもしれませんが、大画面のパソコンやタブレットで視聴する場合、スマートフォンでは美麗に映る720pのHD画質でも、少し粗く感じてしまうことがあります。
したがって、「1,080p(フルHD)で見たい」と感じる方が多いですが、1,080pでの視聴は1時間で2GBを消費するため、日常的に視聴をしていたら、あっという間に月間容量制限に到達してしまうでしょう。
また、最近では各動画配信サービスにおいて、より高画質な4K動画を扱うことも増えてきました。4K動画の解像度はフルHDのさらに上ですから、テザリングで視聴するのは現実的ではありません。
以上より、テザリングと日常的な動画視聴の相性は悪いといえます。容量制限のない他のインターネット回線を使うべきです。
リモートワーク
テザリングを使ってリモートワークを行いたいと考えている方もいるかもしれません。リモートワークで行う作業はさまざまあるので一概にはいえませんが、仕事という責任が伴う作業を行う以上、テザリングよりも高い回線品質のインターネット回線を用意すべきです。
特に懸念されるのが、ビデオ通話との相性の悪さだといえます。リモートワークで頻繁に行うビデオ会議では、大人数で開催されることもあります。
参加人数が増えれば増えるほど回線にかける負担も増すため、テザリングでの参加は会議中にトラブルが発生するリスクを高めてしまいます。
外出先でのリモートワークがメインならモバイルWi-Fi、自宅でのリモートワークがメインなら光回線がそれぞれおすすめですから、より快適なインターネット環境の構築を心がけましょう。

オンラインゲーム
最近のゲームはオンラインで遊ぶことが前提となっているため、オンラインゲームをテザリングで快適に遊びたいと考える方も多いでしょう。
結論からいえば、遊ぶゲームによっておすすめできるかどうかは大きく変わります。
多くのオンラインゲームはそれほど高品質なインターネット回線がなくても問題ありませんが、FPSやTPSなどのシューティングゲーム、格闘ゲームにおいては、テザリングでは快適に遊ぶことはできません。
これらのゲームは一瞬で勝敗が決まるため、少しの遅延でもゲーム体験に悪影響を及ぼすからです。一緒にプレイする方に迷惑をかけることにもなりますから、本格的にオンラインゲームを遊ぶなら、光回線を契約すべきだといえます。

まとめ
テザリングはスマートフォンを使ってインターネット通信を可能にする便利なものですが、用途ごとに適性があります。ネットサーフィンやSNSの閲覧なら快適に行えますが、動画視聴やオンラインゲームになると、不便に感じることが多いでしょう。
自分の用途に合わせたインターネット回線を用意することが、快適な日常生活を送る上で大切です。