インターネットを快適に使う上で通信速度に注目する方は多いですが、同じくらい「Ping値」も大切です。あまり馴染みがない用語かもしれませんが、Ping値を改善することで、大きく回線状況が改善する場合もあります。
Ping値についての詳しい解説と改善方法を徹底的に解説しているので、インターネットを今より快適に使いたい方は参考にしてください。
目次
Ping値について正しく知っておこう
インターネット回線の品質を評価する上で、最も良く使われるのが通信速度を示す「bps」です。光回線の広告やWebサイトで「下り最大通信速度1Gbps」などと示され、多くの方は通信速度だけで回線品質を評価しがちです。
しかし、インターネット回線を評価する上では「Ping値」も同じくらい大切な数値になります。読み方は「ピン」、もしくは「ピング」で、単位は「ms(ミリセカンド)」です。通信速度を示す「bps」とは単位も異なるため、この点には注意しましょう。
では、Ping値はインターネット回線のどんなことを意味する用語なのでしょうか?
「応答速度」のこと
通信速度とPing値の違いを知る上で、ここでは「単位」に注目します。通信速度の単位bpsは「bits(データ) per(毎) second(秒)」のことで、「1秒毎に転送するデータ量」を示します。
つまり、通信速度はbpsの数値が大きければ大きいほど、短時間で多くのデータ通信ができることを意味するのです。
一方で、Ping値の単位である「ms(ミリセカンド)」は、1秒(second)をミリ(1,000分の1)の単位で表しており、データを送ってから応答されるまでの時間、つまり「応答時間」を意味します。
そして、応答にかかる時間は「短ければ短いほど良い」ので、Ping値は「小さければ小さいほど通信の安定性が高く、回線品質が良い」と評価可能です。
参考:Ping値(ピン値/ピング値)とは何のこと?回線速度との違い – @nifty IT 小ネタ帳
実際の速度測定結果
通信速度(bps)とPing値(ms)の概要を確認したところで、実際の速度測定結果を確認してみましょう。
出典:Fast.com
こちらは、「Fast.com」という通信速度とPing値を測定できるWebサイトを利用した結果を示す画像です。
はじめに、中央に大きく示される63Mbpsと右下に小さく示される75Mbpsに注目してください。63Mbpsは下り(ダウンロード)の最大通信速度を示し、この数値が大きければより早くデータを「ダウンロード」できます。
そして、右下の75Mbpsは上り(アップロード)の最大通信速度を示し、大きければ大きいほどデータの「アップロード」を高速に行えます。
では、Ping値はどこに注目すれば良いのでしょうか?
実は、この測定結果中では、Ping値は「レイテンシ」と記載されています。
以下の画像の赤い枠で囲んである2つの数値に注目しましょう。
出典:Fast.com
ここには、アンロード済みとロード済みの2つのPing値が示されているので、まずは両者の意味を解説します。
- アンロード済み
- インターネットが他に一切使われていない時の「理想的な応答速度」。
- ロード済み
- インターネットが使われている時の「実際の応答速度」。
参考:FAST.comでレイテンシとアップロード速度の計測が可能に – Netflix
簡単に説明すると、アンロード済みは「理想的な応答速度」を示し、ロード済みは「実際の応答速度」を示しているため、現在の回線品質を評価したいなら「ロード済み」のPing値を確認すれば問題ありません。
そして、上記測定結果では、アンロード済みの理想的なPing値が6ms、ロード済みのPing値が8msとなっており、両者の差はわずか2msです。したがって、このインターネット回線は「理想的な回線品質に極めて近い」と評価できます。
Ping値の目安
ここからは、Pingの目安を知るために「Ping値と回線品質の関係」を解説していきます。まずは以下の表を確認してください。
ping値 | 安定性 |
---|---|
0ms〜40ms | 高い |
41ms〜60ms | 普通 |
61ms〜100ms | やや低い |
100ms〜 | 低い |
出典:Ping値(ピン値/ピング値)とは何のこと?回線速度との違い – @nifty IT小ネタ帳
Ping値と回線の安定性は上記表のように評価できます。目安としては、Ping値を「〜60ms」に抑えることができれば、インターネット利用を快適に使えると考えましょう。
したがって、現在のPing値が60msを上回るようなら、Ping値を抑える工夫をすることで、回線品質の改善が見込める可能性が高いです。
必要なPing値は用途によって変わる
一方で、インターネット回線により高い品質が求められる以下の作業をする方は、より低いPing値に抑えることが理想です。
- リモートワーク
- オンラインゲーム
- 動画配信
基本的には「仕事が関係する作業」の場合、より安定性を高くインターネットを利用するためにも、Ping値をできるだけ低く抑えるようにしてください。
安定性が高いと評価される「0ms〜40ms」に抑えられれば、ビデオ通話などもスムーズに行えるでしょう。
一方で、FPSやTPSといったシューティングゲーム、あるいは格闘ゲームなど、「一瞬で勝負が決まる」タイプのオンラインゲームを快適に楽しみたいなら、Ping値を「一桁」に抑える必要があります。
Ping値が大きければ大きいほどラグが生じやすくなり、自分だけでなく一緒に遊ぶ他の方にも迷惑をかけることとなってしまうため、Ping値により注意を払いましょう。
Ping値を改善する方法
ここからは、Ping値を改善するための方法を解説していきます。
- 固定回線を利用する
- 有線接続にする
- 最新規格の無線LANルーターを使う
固定回線を利用する
Ping値を改善する上で、最も大切なのは「固定回線を利用する」ことです。固定回線のなかでも光回線が最高品質ですので、光回線の利用が理想的だといえます。
では、どうして光回線の回線品質は極めて高いのでしょうか?それは、光回線の接続方法が関係しています。詳細を以下で確認してください。
光回線は電気信号を光に変えて情報を伝達するため、電磁波の影響を受けにくく、安定した通信が可能です。さらに伝送損失が少ない為、高速で長距離までデータを送ることができます。
このように、光回線は「光」という形で情報を転送するため、より高速で安定した通信を可能にするのです。したがって、現在光回線以外のインターネット回線を利用し、Ping値に悩んでいる方は、光回線の利用を検討してください。
IPv6対応の光回線を選ぶ
また、よりPing値を低く抑えるために、IPv6対応の光回線事業者、プロバイダを選びましょう。
「IPv」はインターネットの接続方式を意味し、後に続く数字が大きいほど新しい方式であることを示します。従来はIPv4が利用されており、インターネット上の住所を意味するIPアドレスを約43億個用意できました。
しかし、インターネットは世界中で使われるものですから、43億個の住所しか用意できないようでは、IPアドレスが不足してしまいます。その分、回線も混雑し、Ping値を下げる原因ともなるのです。
そこでこの問題を改善するために登場した接続方式が「IPv6」です。IPv6ではIPアドレスを「43億個の3乗個」、つまり住所をほぼ無限大に用意できるため、IPアドレスが不足することはありません。
だからこそ、IPv6対応の光回線は回線の混雑がしにくく、より早く安定した接続を可能にするのです。
参考:【IPv6で速くなる】家のネットを高速化させる裏ワザ!ネットの接続を IPv4からIPv6へ変更してみよう – So-net
IPv6の光回線事業者やプロバイダは数多く存在するため、Ping値を抑えるためにも、自分に合った光回線を契約しましょう。
無線回線は不安定
一方で、光回線のような固定回線ではなく、モバイルWi-Fiやテザリングを利用してインターネットに接続している方もいるでしょう。
結論からいえば、無線回線でPing値を抑えることには限界があります。無線回線は各地に設置された基地局と通信をすることでインターネット接続を行いますが、無線という都合上、以下の影響を受けやすいです。
- 気候
- 遮蔽物
- 電波干渉
こういった各種条件が複雑に絡み合った上で、回線品質が決まってしまいます。Ping値をできるだけ抑え、より高い回線品質でインターネットを利用したいなら、光回線を利用してください。
最新規格の無線LANルーターを使う
光回線を契約していたとしても、Ping値が抑えられない方もいるでしょう。その場合、光回線をWi-Fiで利用可能にする無線LANルーターに問題があるかもしれません。
実は、無線LANルーターには「規格」が存在しています。詳細を以下の引用文で確認してください。
規格 | 時期 | 最大通信速度 |
---|---|---|
802.11a | 1999年10月 | 54Mbps |
802.11b | 1999年10月 | 11bps |
802.11g | 2003年6月 | 54Mbps |
802.11n | 2009年9月 | 600Mbps |
802.11ac | 2013年12月 | 6.9Gbps |
出典:Wi-Fi(無線LAN)の規格とは?主流の11nと11acの違いを徹底解説! – ELECOM
このように、末尾につく「アルファベット」で規格が整理されており、現在の主流はより新しい規格の「11nと11ac」です。
たとえば、最新規格の11acでは、最大通信速度が6.9Gbpsとなっています。一般的な光回線事業者の下り最大通信速度が1Gbpsですから、「回線品質を最大限発揮し、Ping値を下げる」ためにも11ac対応の無線LANルーターを利用するべきです。
11ac規格は2013年に誕生したので、これより前に購入した無線LANルーターを使っている方は、買い替えを検討しましょう。規格は無線LANルーターのパスワード(暗号化キー)が記載されている周辺に一緒に書いてあるので、確認してください。
有線接続にする
手軽にPing値を抑える方法として、有線接続にする方法があげられます。
ルーターから使用端末に接続するだけで絶大な効果を発揮しますから、パソコンや据え置きゲーム機など、有線接続対応の端末を使う時は、有線LANケーブルを使ったインターネット通信を行いましょう。
一方で、最近の小型化したパソコンやゲーム機では、LANケーブルを挿入する接続ポートが用意されていない場合があります。その場合、USB接続の「有線LANアダプタ」を使うことで有線接続が可能になります。
また、「2階に部屋があって有線接続ができない」といった、有線接続が物理的に難しい場合もあると思います。その場合の選択肢は以下の2つがあげられます。
- 2階まで引っ張る
- 壁を伝わせて2階までLANケーブルを引っ張る。
- 中継機を使う
- 無線接続の中継機を設置し、そこから有線接続を行う。
「2階まで引っ張る」方法は、少し強引な方法ではあるものの、その効果は絶大です。数十メートルの有線LANケーブルを購入し、壁に伝わせて2階まで引っ張ることで、宅内への影響を最小限にできます。
そして、「中継機を使う」方法は、光回線の終端装置から直接LANケーブルを接続する「2階まで引っ張る」方法よりも効果は薄れるものの、無線接続をするよりはPing値の改善に効果があります。
出典:Wi-Fi中継機や中継機として動作させているWi-Fiルーターに、デジタル家電やゲーム機を有線接続し、無線化することはできますか – BUFFALO
無線機の接続イメージは、以上の画像の通りです。1階に設置している「親機」からのWi-Fi電波が届く位置に無線機を設置し、そこから有線LANケーブルを端末に接続することで、Ping値を下げることが可能です。
無線機の中には有線LANポートがないものも存在するため、購入する時は注意してください。
モバイルWi-Fiでも有線接続にしよう
また、モバイルWi-Fiのモバイルルーターも有線接続をすることで、Ping値を低く抑えられます。モバイルWi-Fiでは、以下に示すようなモバイルルーターを使います。
出典:Speed Wi-Fi NEXT WX06 – UQ WiMAX
このようなモバイルルーターには、LANケーブルを挿入するポートがないため、単体では有線接続ができません。そこで注目するべきが、「クレードル」です。
こちらがクレードルの画像ですが、「モバイルルーター専用スタンド」だと考えてください。このクレードルにLANケーブルを挿入するポートがあるので、そこから有線接続をすれば、Ping値の改善が可能です。
また、クレードルは有線接続以外にも、よりハイパワーな無線接続を可能にしたり、自動充電を行ってくれるなどのメリットがあります。
したがって、モバイルルーターを利用する時はクレードルを使って、より快適にインターネットを楽しみましょう。
加えて、モバイルWi-Fiには自宅に据え置くタイプの「ホームルーター」が存在しています。
出典:Speed Wi-Fi HOME L02 – UQ WiMAX
こちらがその画像ですが、持ち運ばずに使うため、モバイルルーターよりも大型です。給電方法もコンセント接続ですので、よりハイパワーで高品質なインターネット接続が可能です。
そして、このルーターそのものにLANケーブルを挿入するポートがあるため、そこから直接有線接続ができます。
自宅だけで使うならモバイルルーターよりも回線品質が圧倒的に良いのがホームルーターですので、Ping値を下げるためにも使ってみましょう。
まとめ
Ping値は通信速度と同じくらい、回線品質に影響を与える指標です。
Ping値を低くすることで、より快適にインターネットを使えるようになるので、紹介した方法を参考にしてください。